地域のチカラ ~伴走支援の現場~
移住希望者が集うカフェと宿
スパイスの効いたカレーや夏季限定のタコライス、手作りスイーツなどが人気の、cafeニジノキ。
木造の建物の雰囲気や窓から見える海の景色が心地よく、「いつも笑顔を絶やさないご夫婦が、地元の食材を使って作るカレーは、丁寧で優しさ溢れる味。また来たくなる店」などと評判だ。
▼自身の体験をもとに移住者の拠り所へ
同所は、岩美町への移住を考える県外者らにとっての相談場所の一つ、そして実際に移住してきた人同士、移住者と地元とを結ぶ交流拠点にもなっている。
昨年4月には、ニジノキから「浦富台場跡」を挟んで海岸側に、1日1組限定、1棟貸しの宿、UMINOIEムースカが新たにオープンしている。
ニジノキとムースカの川元壮一代表(41)も、岩美町に移住してきた一人。「大好きな岩美町がもっと楽しく、住みやすい町になってほしい」との思いから、移住相談から、実際の定住に向けた手助けなどにも、積極的に携わっている。
神戸市出身で趣味はサーフィン。移住して来るまでは、神戸市内のイタリアンレストランに勤めながら、各地で波に乗っていたという。
「海が見える場所で、カフェをしながら楽しく暮らしたい」との思いから、海沿いの町への移住を検討。鳥取県出身の友人からの情報がきっかけで、最終的に現在の場所への移住を決意。8年前、同じ兵庫県出身の仁子さんと共に浦富に移り住みcafeニジノキをオープンした。
ニジノキのカレーは、川元代表が日々、試行錯誤しながら配合しているという、スパイスが効いた本格手作りカレー。南インド料理「ミールス」をベースに、地域の食材も取り入れ、米や副菜などを混ぜて食べるスタイルが特徴。仁子さんによる手作りの洋菓子やスペシャリティコーヒーも人気だ。
「岩美町は本当に素敵な場所。のんびりしているし自然も豊か。人間関係やコミュニティには適度な余白があり、しんどくならない。日常的にサーフィンもできる」と笑う川元代表。
自身の移住体験や、長年暮らす中で育まれた愛着もあり、移住定住関連の取り組みには積極的に関わっている。そしてニジノキには必然的に、移住希望者が相談に訪れるようになった。
▼「海辺暮らし」が体験できる宿
さらに「海辺での、ありのままの暮らしを疑似体験できる場所を作りたい」という思いで、昨年4月にオープンしたのが、エストニアの言葉で“人生を楽しむ人”という意味を持つ宿「ムースカ」だ。
宿の新設にあたり川元代表は岩美町商工会に相談。補助金申請など各種書類作成の支援を受け、木造2階建ての民家を改装。元の民家の良さを残しつつ、旅館やホテルでは味わえない「暮らす」体験ができる、オシャレな宿に生まれ変わった。
「まずは日帰りでもニジノキにお越し頂き、少しでも岩美の魅力を感じてくれたら次はムースカで海辺暮らしを体験。住んでみたいと思って頂けたら、網代で友人が運営しているシェアハウス『タコブネ』をご紹介し、半年、数年とお試し移住しながら候補地や仕事を探す。そんな流れが定着したら理想ですね」。
今後は、岩美町にある地元店の紹介などもしていきたいと話す川元代表。最後に「宿泊者が買ってきた地元の食材を料理して楽しんだり、海水浴の後に外庭でバーベキューを楽しんだり、岩美町で暮らす良さを、それぞれのスピードで感じてもらえたら」とした。
【出典】株式会社 山陰政経研究所 旬刊政経レポート令和5年7月15日号
▼経営支援専門員の声 東部商工会産業支援センター 主任 田村 彰彦
「カフェと宿の運営をとおして地域の魅力を発信し、移住者を増やしていきたいんです」。そんな志を抱く川元さんは、自身の事業にとどまらず、町の活性化を見据えた活動に力を入れています。こうした思いを尊重し、共感し、相乗効果が高まる経営支援を心掛けています。カフェや宿、地域をさまざまな視点で捉え、それぞれの視点をクロスさせながらより良い方向に導き、伴走しながら一緒に未来を描いていこうと考えています。
【事業所概要】 ■事業所名:cafeニジノキ ■事業内容:カフェ、宿泊施設運営 ■住 所:岩美郡岩美町浦富2283-2 ■連 絡 先:0857-77-4552 ■U R L:https://www.cafe-nijinoki.com
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