地域のチカラ ~伴走支援の現場~
多角化で相乗効果 地域全体で発展を
運送業に加え、林業とバイオマス事業を手がける用瀬運送。始まりは林業で、1960年ごろ、先代が個人事業として創業した。原木を運ぶトラックを購入すると、他社からも運送を依頼され、材木以外の荷も運ぶようになった。1970年に運送業として会社を設立し、林業と運送業の二本柱で事業を続けてきた。
林業では一時保管のタイミングやトラックの手配など、複雑な調整が必要だが、運送業で培った輸送や積み下ろし作業のノウハウを生かし、効率よく原木を運んでいる。
▼前に進むための支援を商工会から
2017年、それまで捨てるしかなかった端材を加工し、木質バイオマスチップの製造を始めた。細い木や曲がった木を機械で細かく砕き、発電の燃料として販売・輸送する。森林資源を無駄なく活用し、地域に雇用も生んだ。
同社の松尾広樹社長は「必要なことをやっていたら、自然と多角化になった」と話す。多角化にはリスクもあるが、一から計画を立て、決断する。その中で支えになる存在が商工会だ。
経営方針を決めたら、事業に活用できる補助金があるか商工会に相談する。条件があう補助金を見つけて機械を購入。次の道筋を決め、また相談する。その積み重ねで事業を育ててきた。
補助金は制約があり、思い通りにはいかないこともあるが、「中途半端になるぐらいなら、補助金が使えなくても思い切って前に進みたい。商工会はその思いを前向きにとらえてくれる」と松尾社長は話す。
▼多彩な職場で働きやすさもアップ
用瀬運送では、ホワイトな職場環境づくりにも努めている。その甲斐あって、運転手が友人や知人の運転手を誘う形で、従業員数は順調に増加中だ。
また、多様な職場があることも同社の強みとなっている。新入社員は斜面にある伐採現場に入る前に、平地にあるチップ工場で材木や機械の扱いに慣れることができ、その後本人の希望や適正をみて配属を決める。運送量が減る時期に運転手はバイオマス部門の応援に回ったり、高齢で運転が難しくなるとバイオマス部門に異動したり、柔軟に働くことが可能だ。
林業では労災事故発生の可能性が高いため、新しい機械を積極的に導入し、労災を防ぐ努力もしている。
今後、同社は積極的に社有林を購入し、仕事の流れのさらなる円滑化を目指す。そして、周りの事業所との連携も深め、それぞれの強みを合わせて人や仕事のやりくりを進めるつもりだ。「地域全体を盛り上げたい」と、視界は広い。
▼経営支援専門員の声 東部商工会産業支援センター 主任 西尾 崇志
社長自身が非常に計数意識が高く、会社のビジョンもしっかり持たれているため、事業構想の聞き取りや計画作成などの支援の際は、従業員や金融機関、行政など内部・外部問わずどのような関係者が見てもすぐに共通認識が持てるよう整理することで、スムーズな事業展開に寄与できるよう意識しています。今後も社長の考えの見える化をお手伝いし、さらなる事業拡大の一助になれたらと考えています。
【事業所概要】 ■事業所名:用瀬運送㈲ ■事業内容:運送業、林業、 木質バイオマスチップ製造・販売 ■住 所:鳥取市用瀬町樟原273-5 ■連 絡 先:0858-87-2973 ■U R L:https://www.mochigaseunsou.co.jp/ |
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