地域のチカラ ~伴走支援の現場~
海見ながら自家焙煎コーヒーを
湯梨浜町石脇の石脇海岸に、水平線を眺めながらコーヒーを味わえるIGNIS COFFEE ROASTERがある。同町出身の山寺みゆきさんと大阪府出身の勇介さんが、こだわりの味を提供する。
▼キッチンカーから店舗へ
大阪の会社で同僚だった2人は、身近に自然がある生活に憧れ2019年夏に鳥取へ移住した。みゆきさんの実家の農業を手伝いながら、「店舗を構えるより、キッチンカーで様々な土地を見て回りたい」と2020年3月に「移動式カフェ タピタム」を始める。道の駅などで出店するうち、自家焙煎コーヒーを販売する人と知り合った。そのころ仕入れていた焙煎済みの豆と比べ、鮮度のよい自家焙煎豆は味も香りもいい。生豆の選択や焙煎方法で自分たちだけの味を出せる。
そこで、専門店を飲み歩いて研究し、紹介された師匠から技術を学び、同年10月に自家焙煎コーヒーの提供を始めた。
コーヒーは好評で、雨風の影響を受けず、安定して営業できる店舗を出すことを決心。キッチンカーとは勝手が違い戸惑いも大きかったが、同業者からの勧めで湯梨浜町商工会の小林祥樹主任に相談し、店づくりや集客のアドバイスを受け事業計画を策定した。「具体例など、自分たちで調べるだけでは限界があったので助かりました」とみゆきさんは明かす。
▼好みに合った豆で、おいしく飲んでほしい
海の家だった建物の一部を改装し、2023年3月に開店。店名は英語のイグニッション(点火)から名付け、朝からコーヒーで元気になってほしいとの願いを込めた。コーヒーはシングルオリジン(単一産地)7種とブレンドで、定期的に入れ替える。最初から「コーヒー大好き」だったわけではないから、迷う客の気持ちがわかる。酸味や香りなど好みを尋ね、豆を勧める。「誰もが飲み干せて、冷めてもおいしく感じられる味を目指しています」と話す勇介さんは、今もなお研究を続けている。
ワッフルなどの軽食や、みゆきさんの実家で採れたキウイや梨を使ったソーダも人気。夏には野花梅のソーダも大好評だった。大粒で香りがよい同町の特産品は、市場に出回ることの少ない希少品種だが、湯梨浜町商工会からの紹介でスムーズに取引を開始することができた。
県外からの客も多く、海が見える席を予約する人も増えた。少しずつ形を変え、こだわりながらも来店客に寄り添える味を目指している。
▼経営支援専門員の声 中部商工会産業支援センター 主任 小林 祥樹
店舗立地は決して良くはなかったため、お客様が目的をもって訪れるお店となるため、支援では山寺さんの想いを聴きながら、強みを活かすことを意識しました。オーシャンビューをゆったり楽しめる特等席を訴求。また、「珈琲好きを増やしていきたい」という思いから、味や香りの好みを聞いて提案するなどお客様とのコミュニケーションを大事にし、「まだ試していない珈琲に飲みにきました」とリピートに繋がっています。商工会では、今後も山寺さんの想いに寄り添いながらお店のファンづくりをサポートしていきます。
【事業所概要】 ■事業所名:IGNIS COFFEE ROASTER ■事業内容:飲食店(カフェ) ■住 所:鳥取県東伯郡湯梨浜町石脇970-1 ■Instagram:@ignis_coffee_roaster/ |
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