地域のチカラ ~伴走支援の現場~
宿泊客にヘアケアのおもてなし
鳥取県全体を〝美容室〟に見立て「ご来県者に『美しい髪』というおもてなしを」のビジョンのもと、県内の農・商・観が連携して取り組むアメニティ体験プログラム「とっとりトリートビジョン」が始まった。
東・中・西各3宿泊施設が参加し、浴室等に地元産のプレミアムブランド「sakyu」のアメニティを設置。宿泊客に良質のヘアケア、ボディケアを体験してもらうというものだ。
アメニティに地方色を打ち出すというのはありそうであまりなかった部分。インバウンドを含めた今後の観光振興において、他との差別化にもつながる取り組みとなっている。
▼髪にも地球にも優しいシャンプーで美しく
このプログラムを仕掛けたのは材料の栽培から手掛ける〝6次産業メーカー〟㈱101(本社・鳥取市面影2―13―13、寺田健太郎代表取締役)。
寺田代表は関西で複数の美容室を経営する美容師。令和元年に妻の実家のある鳥取市に移住し、鳥取空港近くにある砂丘地の圃場でラベンダー栽培と、若桜町に構えたラボでの独自のシャンプー・トリートメントの開発を始めた。
「競争の激しい美容業界で独自性を見出すために始めた取り組み」と寺田代表。ラベンダーの栽培から精油加工、商品企画・開発を一貫して手掛け、sakyuシリーズ「ミドレシャンプー」と「ミドレトリートメント」を生み出した。
鳥取の砂丘地で栽培されたラベンダー精油を使用し、22人ものプロの美容師の意見を反映し開発したほか、「英国ヴィーガン協会」の承認を得るなど独自性、機能性、社会性を兼ね備えているのが特徴だ。
「今回のプロジェクトは移住当初から構想していた。鳥取県全体を自分の美容室と考えてみたら、自分が作ったヘアケア商品で鳥取県に来てくれた人の髪を美しくするというビジョンが見えてきたんです」と寺田代表。
▼新しい旅行アメニティ体験プログラムで真の非日常へ
ところが商品化を進める中でコロナ禍となり、「とっとりトリートビジョン」はその実施を延期せざるを得なくなった。
そしてコロナ禍が空け、同社はすぐに、若桜町商工会の紹介で同社商品をアメニティとして使ってもらっていたという県西部の宿泊施設でテストマーケティングを実施。すると、宿泊者の3%が試用後に商品を購入するという結果がでた。
「使って頂ければ、一定数は売れるという事が分かり『これはいける』と確信しました。帰りの車の中で、温めていた『とっとりトリートビジョン』構想をまとめ、コンビニの駐車場で企画書を書き、店内のコピー機で出力して別の宿泊施設にアポを取り営業に行きました(笑)」。
その後、商工会や金融機関などの紹介も活かして順次営業を進め、並行して要望の多かったボディソープも開発。『ハクトボディソープ』をsakyuブランドに加え、県内9施設(岩井温泉岩井屋、丸茂旅館、味覚のお宿山田屋、湖泉閣養生館、BARCOS RYOKAN三朝荘、三朝薬師の湯万翠楼、ロイヤルホテル大山、皆生遊月、皆生温泉華水亭)が参加する「とっとりトリートビジョン」が11月1日よりスタートした。
現在、全国を対象にオーディション形式で、同プログラムの公式アンバサダーを選定中のほか、新商品、新シリーズも準備中。さらに、外部に発注している工程の一部を内製化する計画も進行中だ。
寺田代表は最後に「アメニティの地産地消と、宿泊者へのヘアケア・ボディケアのおもてなしで、鳥取県の観光振興に少しでも貢献出来たら」とした。
【出典】株式会社 山陰政経研究所 旬刊政経レポート令和5年12月15日号
▼経営支援専門員の声 東部商工会産業支援センター 主任 浦木 陽介
商工会への相談は商品に係る販路支援がきっかけでした。「真に安心・安全をお約束できるヘアケアを提供したい」という企業理念のもと、鳥取砂丘で栽培したラベンダーを原料にしたヘアケア商品を開発し事業展開されてきた寺田社長。事業の着実なステップアップを図るため、事業計画を策定し経営課題や具体的な取組内容を整理してきました。さらなる事業の飛躍に寄与すべく、商工会はこれからも寄り添った支援をしていきます。
【事業所概要】 ■事業所名:㈱101 ■事業内容:生活雑貨製品製造業 ■住 所:鳥取市面影2-13-13 ■U R L:https://www.101.farm/ |
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