地域のチカラ ~伴走支援の現場~
地域と一緒に歩んでいけるスイーツづくりを目指して
青谷の酒蔵地域「山根酒造場」とコラボした日置桜ケーキは、土産品や贈答品として人気を集めている。「地元の食材を使っていくことを大切にしていて、開店当初から地酒を使った菓子を作りたいと考えていました」。そう話すのは、鳥取市気高町で洋菓子店を営む長茂雄さん。
一口頬張れば、ほのかな日本酒の芳醇が口の中に広がるケーキは、地域貢献に一役かっている。
▼顔が見える菓子作りがモットー
長さんは、鳥取市浜村の老舗和洋菓子店「みどりや」に生まれ、菓子作りは身近なもので、憧れでもあった。大阪の洋菓子店で10年働いたのちUターン。実家を手伝い、5年前に独立した。
「小さな頃から親の姿を見てきて、地元でやりたい気持ちがありました。大阪時代は問屋さんから買っていた食材を使用していたが、今はできるだけ地元の生産者さんを訪ねて仕入れています。作り手の顔が見えると、この素材で美味しいお菓子を作ってやろうという気持ちになりますね」と話す。
青谷町産の二十世紀梨は蜜漬けにして3種類の焼き菓子にし、ビワはケーキに。そのほか気高町産のブドウやイチゴなど、旬のフルーツを探し回りながらケーキを作っている。
「車で走っていても、あそこは何を育てているんだろうとか、このフルーツがいい頃だなぁとか。それを使って何を作ろうかといつも頭の中はお菓子のことでいっぱい」と話す長さんのお店には色鮮やかなケーキがショーケースに並ぶ。
▼地酒を使ったオリジナルケーキ
「父が作るブランデーケーキが小さい頃から好きで、自分はお酒飲めない方ですけど、地元のお酒を使ったケーキを作ってみたかったんです」と思い描いてきた構想を、鳥取市西商工会の白岩主任に相談。
白岩主任からご縁をつないでもらったのが、青谷町で明治20年から酒造りをしている山根酒造場だった。日本酒は洋酒と違って香りや味が立ちにくいといい、6種類の酒を試しながら一番味がしっかりと出る純米大吟醸「日置桜」を選んだ。酒粕も入れてしっとりとした食感を出すなど、工夫を重ねて令和4年11月に販売をスタート。持続化補助金を活用してパッケージデザインにもこだわり、東部商工会産業支援センターのプレスリリース支援事業で情報発信を強化。新聞やテレビで取り上げられ、販売開始後すぐに話題を呼んだ。
同時に実家の菓子「貝殻節もなか」をモチーフにした貝殻節塩マドレーヌも作り、地元の特色を出す商品づくりにさらに力が入っている。
実家の店を出て自分の店を持ったが、こだわったのは南欧風の造りだけではない。「Le vent vert」は、フランス語で「みどりの風」という意味。「実家の『みどりや』の名前から取りました。これからも地域の人に愛されるお菓子を作りたいですね」と話す長さんの表情は希望に満ちている。
▼経営支援専門員の声 東部商工会産業支援センター 主任 白岩 英俊
長さんは実家の老舗和菓子店から2019年に独立し、同年7月にLe vent vertを開店。独立前から「地元食材を使った看板メニューで地域を盛り上げる」というビジョンを描き、日置桜を使った商品開発を検討されていました。この構想実現に向け、山根酒造場さんとの連携、持続化補助金の活用、商品開発後の情報発信など、商工会の支援をうまく活用いただけたと感じています。今後も商工会は長さんの思いに寄り添う支援を行っていきます。
【事業所概要】 ■事業所名:Le vent vert(ルヴァンヴェール) ■事業内容:菓子小売業(製造小売) ■住 所:鳥取市気高町北浜2-142-1 ■連 絡 先:0857-51-0597 ■Instagram:@le_vent_vert_78/ |
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