地域のチカラ ~伴走支援の現場~
築き上げた技術力が強み
フェンス、ガードレールの施工のほか外構のデザイン・施工にも取り組む山陰フェンス工業㈲。事業の幅を広げた背景には、父から息子への円滑な事業の引き継ぎがあった。
▼自然を求め故郷へ 新部門立ち上げまでの5年
同社は昭和63年に安藤義寛さんが創業。フェンスやガードレールの設置は、安全性・正確性が重視される。フェンスの施工には経験値が高く熟練した技術が必要となり、また、ガードレールの施工には、支柱を打ち付ける専用の機械と、その機械を取り扱う技術力も欠かせない。義寛さん夫妻と職人たちはその要求に応え、山陰の暮らしの基盤を支えてきた。
息子の睦男さんは県外で働いていたが、同郷の妻と「自然が豊かな鳥取で子育てがしたい」と考えた。当時、父の義寛さんは自身の年齢のことから会社の今後を案じており、それならばと、会社を継ぐことを念頭に平成27年に故郷に戻った。
「父と母の仕事ぶりは見ていましたが、やってみるとまったく予想と違いました」と睦男さんは振り返る。現場の状況に合わせて作業しなければならず、勉強が必要だと痛感した。
また、フェンスの施工現場に出向くうちに、住宅の外構需要が高まっていることを知り、「顧客と直接つながる仕事がしたい」、「依頼主の希望を聞き、デザインから施工までを請け負いたい」と思うように。その結果、外構の設計やデザインを学べる専門学校に通うことを決意。働きながら週に1回、大阪の学校まで行き来すること1年、令和2年に睦男さん夫妻が中心となり、主に住宅の庭を手掛ける新部門「and Terrace」(アンドテラス)を設立した。
▼スムーズに事業を継承し、次の一歩へ
新部門設立から2年経ち、事業の継承を考えたが何から手をつけていいのかわからない状態だった。そこで、持続化補助金の申請等で支援を受けていた米子日吉津商工会に相談。事業継承・引継支援センターとも連携し税制や株式の手続きなどの説明を受けながら、具体的な計画を立て、義寛さんも打ち合わせに加わり、意思の疎通を図りながら準備を進めた。
令和4年9月、睦男さんが代表取締役に就任した。「やっていることは変わりません。不安というより楽しみ」と笑顔の睦男さん。従業員の生活を考えたり、会社の課題を考えたり、責任感も増した。
義寛さんは会長となり、元気に現場に出ている。and Terraceは、センスの良い庭造りが好評で、口コミにより依頼が増えつつある。睦男さんは「従業員を増やし、展示部門も充実させたい。いずれは公共工事でも仕事の幅を広げられたら」と今後の展望を語る。父や職人たちが築き上げた技術力を会社の強みとし、地域での信頼を守りながら、新しい方向へと事業を広げている。
▼経営支援専門員の声 西部商工会産業支援センター 主任 伊藤 伸也
事業承継を見据え、新たな収益の柱として自社の強みを生かし、外構・ガーデン事業部門「and Terrace」を立ち上げました。社長は、通常業務をこなしながら休日に大阪の専門学校に通い、知識を習得されました。この「and Terrace」は顧客からも好評で徐々に売上を拡大し、収益の柱になりつつあります。自らが考え全力で行動し、新たな事業に挑戦される姿はかっこよく、輝いています。これからも全力で取り組む同社を支援していきたいと思います。
【事業所概要】 ■事業所名:山陰フェンス工業㈲ ■事業内容:フェンス、ガードレール等の施工工事、 外構・ガーデニング ■住 所:米子市淀江町佐陀322-23 ■連 絡 先:0859-56-5665 ■U R L:《山陰フェンス工業㈲》 https://www.big-advance.site/s/173/1376 《and Terrace(アンドテラス)》 https://www.and-terrace.net/ |
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