地域のチカラ ~伴走支援の現場~
一年の頑張ったを褒めてあげて
昭和23年開業の老舗写真館、三原屋写真館(東伯郡湯梨浜町松崎四三四―一七、立木一光代表)が令和4年から始めた子ども向け撮影プラン「ぼくのわたしのがんばった大賞」が、利用者から好評を得ている。
プロが撮影した写真が記念として残るということだけでなく、一緒に作品を飾ったり親が子どもを褒めてあげるという体験型の要素がプラスされており、「子どもの自己肯定感を高めてくれる」という声も。
同館は写真館で働いていた先代が終戦後、当時は商店だった三原屋に婿入りし、業態を改め松崎の地に開業したのが始まり。5年ほど前から、現代表の後継者である昌光氏(44)が中心となり事業を進めている。
「ぼくのわたしのがんばった大賞」は、子育て世代でもある昌光氏のアイデアと、同館の経営支援に携わる湯梨浜町商工会による継続的な支援が重なり生まれた。
3月、保育所や小学校に通う子どもたちは、1年の間に作った絵画や工作など複数の作品を持ち帰る。一度は皆で眺めて団らんのひと時を過ごすだろうが、その後の保管、処分に困る親も少なくないだろう。
昌光氏は、息子が持ち帰った作品を広いスタジオの壁面に飾り、作った本人の“ドヤ顔”と共に写真に収め、店頭に飾った。「当初はサービス化するつもりではなかったんですが、商工会の方や、商工会経由で来て頂いたよろず支援拠点の方と話していくうちに、今回の撮影プランが出来上がりました」と話す。
壁に作品を飾り撮影するというプランは既に他所でもされていたが、基本的には撮影して成果物を渡したら終わりという事がほとんど。そこに「みんなで飾りつけ」「表彰式」という体験を加えた格好だ。
「時間はゆったり取らせていただいています。会話も楽しみながらご家族で飾り付けて頂き、飾り付けが終わったら親から子へ、表彰状の授与です。日頃の頑張りを称え、少しだけ仰々しく子どもを褒めてあげる機会を作ることで、子どもにとっての良い思い出の一つになればという思いを込めています」。
家族写真やハレの日の写真を部屋に飾るだけでも、子どもたちの自己肯定感が高まるという(『ほめ写』というそうだ)。飾りながら改めて作品を褒め、表彰式で仰々しく褒める。そんな体験がしみ込んだ写真を飾れば、それは“究極のほめ写”になるのかもしれない。
撮影を行うのは同館2階のスタジオ。東郷湖側に向いた全面ガラス張りの窓から入る自然光が、作業中のスナップ写真をより自然な形に演出する。撮影されたスナップは思い出の一コマとして、データ提供される。
「ご自宅ではなかなか作品を全て並べるのは難しい。自分が作った作品を前にして皆に褒めてもらったら子どもも嬉しいでしょうし、いつもと違うドヤ顔をみせる我が子を見るのも親として嬉しいものです。子どもの成長記録にもなり、何より楽しい思い出作りの一助になればという思いでやっています」。
スマホカメラの高性能化や保管・閲覧のデジタル化等もあり、写真館の利用シーンが減少しているのは事実。しかし昌光氏は、「家族みんなで手を繋いで頂いたり、ご夫婦に見つめ合って頂いたり…。普段なら照れくさくてできないような『体験』が、写真館なら出来たりもしますし、その体験はそれぞれの関係にとってきっとプラスになると思います。今回の新プランが写真館の敷居を下げるものになってほしいですし、何より、多くの方の笑顔のきっかけ創りをしたいという思いで、今後も事業を進めていきます」とした。
【出典】株式会社 山陰政経研究所 旬刊政経レポート令和6年2月5日号
▼経営支援専門員の声 中部商工会産業支援センター 主任 小林 祥樹
全国的に昔ながらの写真館の利用が減少する中で、撮影体験や写真を介して笑顔になってもらいたいという立木さんの想いを形にするため、新たな撮影サービスの企画から販促までの伴走支援を行いました。後継者である立木さんが主体的に取り組まれたことで、「待ちの経営」から「攻めの経営」へ転換する大きなきっかけになりました。さらなる飛躍を目指し、今後も事業者に寄り添った支援をしていきます
【事業所概要】 |
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