地域のチカラ ~伴走支援の現場~
最新機械導入で生産性向上
樹木伐採業の㈱久代林業(日野郡日南町霞四二五―六、久代善平代表取締役)では、多機能新型ショベル導入による現場の生産性向上のほか、情報のデータ化・見える化、SNSを活用した情報共有、研修による従業員の能力向上、労働環境改善などに力を入れている。
▼一石三鳥の最新機械で事業の効率化を進める
同社は平成29年、個人事業所としてスタート。叔父が営んでいた事業所で林業の世界に入った久代代表が日南町森林組合勤務を経て独立、開業したものだ。令和4年4月には株式会社に法人化。現在、日南町内で森林の間伐と伐期を迎えた木の全伐、搬出作業などを手掛けている。
「林業を始めた頃は国産材の価格が低迷していた時期でしたが、機械化が進んできていたため、伐採量を増加させることで生産性が上がり、利益が出せるようになりました」と久代代表。
そのような中で同社では、法人化の際に日南町商工会の支援を受け、事業計画を策定するとともに補助金を活用して新型の機械を購入した。
「独立当初から中古機械を購入したり、周囲の方にも恵まれ、場合によっては不足する機械を貸して頂いたりしながら事業を軌道に乗せていきました。そして今後の事業の効率化、従業員の負担低減を図る意味も込め、最新機械の導入に至りました」。
導入したのは〝フェラーバンチャザウルスロボ仕様のアタッチメント〟を搭載した林業用油圧ショベル「SH135X―7」=写真=。掘削機能の「バケット」と切断機能の「切断刃」、つかみ機能の「グラップル」の3つの機能を備えており、1台で林道造成の掘削と樹木切断・伐倒・つかみ作業を行うことが出来る機械。これにより「森林作業道造成」「木寄せ」「地拵え」の3つの作業が技術者1人で可能になるという。
「これがまさに一石三鳥の機械。今後若手の育成や定着を図るためにも、このような効率化は必要な流れだと感じています」と久代代表。
▼情報可視化・共有等で次世代育成・定着も
合わせて同社では、人材育成や安全対策の強化も図っている。講習会の受講や同業他社の現場の視察などを定期的に実施、従業員のスキルアップに応じた昇給制度なども設けた。
また、森林作業道の造成記録を作成しその情報を共有。障害物や根の深さ、土質などの情報と共にデータ化しクラウド上に保存、技術者の実務教材として活用されている。さらに現場の危険情報の見える化や安全対策チェックリストの作成で、事故や故障を未然に防ぐ工夫も。
「私が思う林業の魅力の1つに、1人で、自分が思うように仕事ができるというものがあります。現在従業員が3人、春に1人入りますが、朝顔を合わせたら後は各々散らばっての仕事になります。生産性を高め、仕事に必要な情報の共有体制を整えておくことで、さらに個々での仕事がしやすくなる」。
日南町は森林が全体の90%を占め、そのうち多くが戦後に植林された杉、檜など。樹齢60年から70年の木が伐期、つまり売れ頃となるそうだが、日南町にある木の多くが、その伐期を迎えているという。
「間伐中心の林業から全伐中心へ、そしてその後の植林も見据えていかないといけない。その流れに合わせて今後の体制構築、さらなる作業効率を図っていきたい」と久代代表。
また、バイオマスエネルギーの普及で起きた売り先の変化など「今後も、何がどのような価値を生むか分からない時代になった」ともしており、試験的に小規模の製材機を導入する予定も。「例えば樹齢数百年の大きな木に本来の価値が生まれるよう加工を試してみたり、捨てられる運命の曲がった材の活用法を探ったり、面白そうなことを試してみる」と久代代表。
同社では今後も様々なアイデアを試行しつつ、日南町で事業の発展・継続に力を注ぎ続ける。
【出典】株式会社 山陰政経研究所 旬刊政経レポート令和6年3月15日号
▼経営支援専門員の声 西部商工会産業支援センター 主任 田仲 玲子
支援のきっかけは生産性向上に向けた高機能林業機械導入の相談でした。従業員は30代が中心で林業経験が浅い従業員も多いため、設備導入と併せて安全対策への仕組みづくりを一緒に検討していきました。人材育成や安全対策には製造業のノウハウを取り入れ「安全性と生産性の向上の両立」を実現することが出来ました。久代社長の「楽しく仕事をする」をモットーとした経営に、今後も伴走支援していきたいと思います。
【事業所概要】 ■事業所名:㈱久代林業 ■事業内容:林業サービス業 ■住 所:日野郡日南町霞425-6 ■連 絡 先:TEL 090-8064-7539 |