地域のチカラ ~伴走支援の現場~
バイヤーコンテストで銀賞 黒らっきょうが切り拓く未来
あれ、甘い。口に入れた瞬間に、一般的にすっぱい味をイメージするらっきょうとは違って、甘さと香ばしさを感じる。「鳥取県が特許を持つ製法を自分なりに工夫し、納得した味になるまで3年かかりましたから」と井上農園の井上義大さん。試行錯誤の末に生み出した自慢の黒らっきょうが、昨年末に開かれた全国商工会連合会主催のコンテスト「buyer’s room 2023」で見事銀賞を受賞。「これをきっかけにたくさんの人に黒らっきょうを知ってもらいたい」とこれからの可能性に期待している。
▼課題は認知度をいかに上げるか
砂地を生かし、江戸時代から栽培が始まったとされる福部町のらっきょう。しかし、時代とともに自家漬けする人は減少し、一方、加工品の需要は増加。そんな傾向を見て10年前から黒らっきょうづくりを開始し、加熱方法の工夫や乾燥機などの設備投資をしてようやく完成。糖度60度以上。果実のような甘みが特徴で、全く新しい商品として自信があったが、販路拡大は大きな課題だった。
「健康に良い食品として毎日1粒ずつ食べてもらうのが理想です。道の駅や土産物屋においてもなかなか売れないのは、まず高いし、初めて見る人は実際に食べてみないとどんなものかもわからない。一般的な酢漬けの方が買いやすいですよね」
これまで黒らっきょうの売上は、生らっきょうの30分の1程度。どこかで人気に火をつけられないかとネットでの情報発信を強化するため、鳥取市東商工会に相談。持続化補助金でHPを刷新し、SNSでの発信を始めるもなかなか認知度が上がらない。そんな時、商工会の草刈陽子さんからコンテストへの出品を提案された。
▼「buyer’s room」で銀賞獲得
「本当に良いもので可能性を感じていました。ぜひ全国の皆さんに知ってもらいたかったんです」と草刈さん。熱意に押され、井上さんは食品流通関係者ら41名が審査する「buyer’s room 2023(11月の部)」に出品。全101商品のうち、2位にあたる銀賞に選ばれた。「とんでもない商品をさらっと持ってこられましたねと言われました(笑)」と、全国の目利きたちを驚かせた。
「受賞以来、少しずつ問い合わせが増え、話をさせてもらうことも出てきています。濃厚な甘みが肉料理のソースにも合うのか、フレンチのシェフに使ってもらうこともあるし、これを良いきっかけにしたい」
3月には東京・六本木のスーパーに初出荷。全国での販路拡大を目指しながら、その目にはさらに広い世界を見ている。
「人口が減少していく日本での販売が厳しくなったとき、日持ちもして輸出に向いている商品。海外に広げていくことも夢じゃない。まだまだやれることはあるかもしれない」
受賞で得た自信。黒らっきょうが切り開く未来に、手応えを感じている。
▼経営支援専門員の声 東部商工会産業支援センター 係長 草刈 陽子
「“完熟黒らっきょう”の知名度を上げ、販売強化したい」と、持続化補助金の活用の相談を受けたことで支援が始まりました。
手間と愛情をかけ栽培された自家製の砂丘らっきょうを使用し、改良に改良を重ねられた黒らっきょうは、甘くておいしくておススメの逸品です。
全国・世界の方に味わっていただきたいという井上さんの想いを実現するため、商工会は今後も積極的な販路開拓支援に取り組んでいきます。
【事業所概要】 ■事業所名:井上農園 ■事業内容:製造業 ■住 所:鳥取県鳥取市福部町海士165−5 ■連 絡 先:0857-77-4155 ■U R L:https://amaqra.com/ |