地域のチカラ ~伴走支援の現場~
日本酒の魅力を体感できる施設を
大山の伏流水と地元産の酒米で日本酒を造る久米桜酒造(伯耆町)が、酒の魅力を伝える直売所を作った。酒蔵とクラフトビール工場、レストランなどがひとつになった「大山ブルワリー」の一角で、商品の販売だけでなく、セミナーなどを開くためのスペースもある。酒造りの環境や原料作りへの取り組み、造り手の想いなどを現地で知ってもらうことで、味わいをより深めてもらうねらいだ。
▼より良い環境を求めて大山へ
久米桜酒造は1855年に米子市で創業し、1985年、酒造りにより良い環境を求めて大山のふもとに移転した。現在は関連会社の久米桜麦酒やレストランと共に「大山ブルワリー」を構え、酒やビールの様々な楽しみ方を提供している。
これまでも社屋の片隅でこじんまりと商品を販売していたが、2022年、県の補助金を活用し、酒蔵直売所として大きく改装した。
天井や床には県産の木材を使い、居心地のいい空間に。商品の陳列・販売スペースを広くとり、多様な酒を手にとって買い物が楽しめる。奥には県産木材を活かしたカウンターテーブルと椅子を置き、十数名がセミナーや勉強会などを開くことができる。簡単な厨房も備えており、飲食を伴うイベントも可能で、いずれは食堂として活用する計画も。
▼ここにしかない味を届ける
代表取締役社長の田村源太郎さんは、「商品の価値を伝えることができるベストな場所はここ」と考え、改装を決めた。
ここに来て、ミネラル豊富な大山のわき水に触れ、契約農家や自社の田で育つ酒米を見て、山を眺め空気を味わってほしい。そして酒を造る杜氏や蔵人の想いを聞きながら酒蔵を見学してもらいたい。「この地で作る意義を感じて欲しいんです」と田村さん。
実際に久米桜酒造では、ここでしか造ることができない酒を追求している。移転当初から地元農家と共に酒米を育て、地域の古名を冠した地酒「八郷(やごう)」を造り続けている。近年では、酒米のほぼすべてが、会社から半径2~3キロ以内で育ったもの。昔ながらの生酛(きもと)造りの酒を造る。手間も時間もかかるが、その場所ならではの米のうまみを引き出し、深いコクと味わいを生む。
伯耆町商工会との付き合いも長く、「これまでの道のりを支えてもらい、情報もいただき、助かっています」と田村さん。今後は、遠くから訪れる人の受け入れ態勢をさらに充実させる。そして地元の人に「うちの酒蔵」と愛着を持ってもらえるように、今の久米桜酒造の姿を伝えたい。「やるべきことはいっぱいあります」と進化を続ける。
▼経営支援専門員の声 西部商工会産業支援センター 主任 篠田 陽子
大山山麓の新鮮な空気、良質な伏流水に魅せられ現在の地でお酒作りを始められて今年で39年。地域との繋がりを大切に、常に前向きに事業拡大を模索される田村社長の想いの具現化に向け事業計画策定、施策活用の支援等を行ってきました。今回の施策活用により、「現地や空気を感じてもらい、商品の良さを伝える場」が誕生しました。田村社長の想いに寄り添い、大山ブルワリーのさらなる飛躍を目指し、今後も持続的発展に向け支援をしていきたいと思います。
【事業所概要】 ■事業所名:久米桜酒造有限会社 ■事業内容:製造業(酒類製造業) ■住 所:鳥取県西伯郡伯耆町丸山1740-50 ■HP URL :http://g-beer.jp/ ■連 絡 先:0859-68-6555 |