地域のチカラ ~伴走支援の現場~
地元密着の鉄工所を引き継ぎやりたいことを形にしていく
広々とした倉庫の中には、大きな鉄工機械が並ぶ。「これはNCフライスといってプレートに穴を開けたり、カットしたりする機械。一点一点の注文に合わせて作るのに適しているんです」と話す田口訓さん。もともとは安来市で機械部品や鉄工造作物の製造をしていたが、住まいがある大山町の宮原鍛治鉄工所を2024年1月に事業承継。機械だけでなく農機具の修理なども受け、地域に根ざした鉄工所として営んでいる。
大阪府出身。高校生の頃にはバイクのエンジンを分解して組み立てるなどものづくりが好きで、機械部品を製造する仕事に就いて技術を磨いた。独立開業するきっかけは8年前。安来市に工場を構える話があった。
「大阪に住みながらも、海や山が近い自然豊かな鳥取が好きで、よく遊びに来ていたんです。そんな時に安来の話をもらい、今動かないともう動けないかもしれないと住むのに良さそうな大山町に移住しました」
安来市で働く日々を送っていたある時、大山町で40年以上に渡って鉄工や農機具の修理、オーダーメイドでの器具製作をしてきた宮原鍛治鉄工所とのご縁が繋がった。一年半前に先代の誠さん(故人)が逝去。後継者がおらず困られていたところに、同じ大山町民である田口さんへ白羽の矢が飛んできた。
「宮原さんの鉄工所があることは認識していたくらいでしたが、お世話になっている方から話をもらって自分にできることで地域のお役に立てるならと承継させてもらいました」
時代は自動化による大量生産に向かう中、独自のやり方を貫いてきた。「うちに依頼されるのは一品ものが多い」と言い、長年愛用するNCフライスを使い、細かな要望に合わせて製造していく。事業承継してからは宮原さんがそうであったように、「包丁の柄がダメになった」「鍬を直せないか」など暮らしに密着した困りごとにも対応し、仕事の幅も広がった。
仕事と同じように、暮らしも自分たちの“オリジナル”を生み出す田口さん。商工会に補助金の相談をして妻と一緒にキッチンカーで飲食販売を始め、大山町で食べた米の美味しさに感動して自らも米作りにも精を出している。
「なんでも手を出してしまう(笑)。でも何十年も前に妻と『いつかこんなことしたいなぁ』と話していたことを一つ一つ叶えているんです。この工場でも鍛治をされていたので包丁をたたいてみたいし、溶接のワークショップなんかもやってみたい。やることはたくさんありますね」
笑いながら話す田口さん。夢を叶えながら、できることで地域に還元していく。
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▼経営支援専門員の声 西部商工会産業支援センター 主任 安井 夏樹
田口さんは、大阪で各種機械部品製造・修理業として開業。取引先の安来進出に伴い、大山町への移住を決断。仕事が忙しくなるにつれ、広い作業スペースの必要性や、長い通勤時間が課題となり、今回の事業承継の話を受ける事になりました。
商工会では、事業承継引継ぎ支援センターとの連携により、円滑な事業承継をサポート。事業譲渡契約書の作成支援や、県産業未来共創事業補助金(事業承継促進型)の計画策定支援などを行いました。
【事業所概要】 ■事業所名:ナッツハードウェアエンタープライズ ■事業内容:金属製品製造・加工業 ■住 所:鳥取県西伯郡大山町今在家473 |
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