地域のチカラ ~伴走支援の現場~
地元の味、移動販売で
「豆腐も、ドーナツも、とにかく味にはこだわってきました」
そう話すのは山野松美代表。前経営者から店を引き継ぎ、雨滝で豆腐を作り続けてきた。全国名水百選の湧水、厳選した県産大豆、天然のにがり。こだわり抜いた素材で作る豆腐は、旨みがぎゅっと詰まった美味しさで人気を博していた。
「大豆をすりつぶしたものを呉(ご)といい、それを炊いて絞る煮搾りという製法が一般的ですが、うちは呉を炊かずに絞る生搾りで作っています。雑味を極力残さないためですが、原価率が悪くなるやり方。でも、味は譲れなかった」
その味が評判を呼び、県内外から多くのお客さんが訪れる名店となった。しかし、コロナ禍で状況は一変して卸先から発注がなくなった。設備の老朽化や燃料費高騰もあり、思い切って収益の柱だったBtoBの豆腐製造をやめる決断をした。
▼ピンチをチャンスに
不運は重なり、二年前には台風被害で雨滝の橋が倒壊。観光ができなくなり、「滝のついでに寄ろうかと思ってくれるお客さんは来なくなった。でも、待っていてもだめだと攻めに出ました」と山野さん。商工会に相談し、補助金を使って移動販売を行うためのキッチンカーを導入。以前から根強い人気の豆乳ドーナツを、県東中部のスーパーに出向いて販売するようになった。
「そうしたら、想像以上の利点がありました。スーパーで販売しているとお子さんに人気が出て、若い家族層に認知してもらえる機会が増えました。新しい商品もまずはキッチンカーで試せますし、やれることが広がりました」
店舗での飲食の割引券も配布し、そこから店に豆腐料理を食べに来てくれる人も増加。これまでより若いお客さんが増えたという。
「いろんな地域に出向き、対面してうちの味を喜んでいただける。その実感がまた手応えや自信につながります。これからも美味しい豆腐やドーナツを作っていきたいです」
移動販売で新たなファンの獲得に成功。動いた先に、新たな可能性が見えてきた。
▼経営支援専門員の声 東部商工会産業支援センター 主任 村中 智美
「素材と味へのこだわり」でファンを魅了する自慢の豆乳ドーナツは移動販売を通して、今や大人気の商品となっています。「守り」から「攻め」の経営へ舵を切った山野社長の姿勢こそが、事業を成長させたのだと思います。商工会は、キッチンカー部門強化のメニュー開発や販促に向けた補助金活用などで関わらせて頂きました。今後も、事業者様の強みを活かし、寄り添った支援を行ってまいります。
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【事業所概要】 ■事業所名:有限会社とうふ工房雨滝 ■業 種:飲食業(豆腐料理専門店) ■住 所:鳥取県鳥取市国府町雨滝 510
■H P:https://amedaki.jp/ |
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