地域のチカラ ~伴走支援の現場~
山と海の恵みで育む「海藻米」の販路開拓
左に右に折れながら山道をたどると、傾斜地に沿って段々と連なる棚田に行き着く。標高約400㍍の山あいにある日野町別所地区。過疎化が進むこの農村部で、地域活性化の期待を背負うブランド米作りが進む。中海の海藻を肥料にしたコシヒカリ「鳥取海藻米」だ。
「山と海の恵みで生まれた素晴らしいお米。冷めてもおいしく味わえます」。低農薬で化学肥料を使わない米作りを実践し、2016年産から海藻米を育てる「優栽」の代表取締役、松本洋一さん(67)は胸を張る。
同社によると、中海の海藻はミネラル分が豊富に含まれる。米のおいしさを示す食味値は83~89と高く、上品な甘みやモチモチとした食感が特長という。
▼儲かる農業へ
当初は思うように販売先を確保できず、米子市の旅館に買い取ってもらったり、境港市の学校給食で出されたりするなど流通は限定的だった。
こうした中、16代続く農家の松本さんは攻めの経営に転換。「儲かる農業を目指す」として法人化し、商工会の支援を受けながら販路開拓に乗り出した。
第1段として、購買を促す役割を担う商品パッケージを刷新。社名を大書し、生産者の顔が見えるよう自身のイラストを添えた。特色を出そうと、海藻米のストーリー性を描いたパンフレットも作成。県産業成長応援補助金や町の補助金を活用して需要の掘り起こしに取り組んだ。
一方で経営支援専門員と連携して取引先を探し、飛び込み営業や個別商談を重ねた。2月には県商工会連合会主催のオンライン商談会に参加し、初めて首都圏バイヤーに売り込んだ。松本さんは「支援を通してビジネス感覚を養うなど個人的な成長にもつながっている」と話す。
▼情報発信を強化
取り組みが奏功し、販売先は近隣県の個人客などにも拡大。法人前と比べて売り上げは3割増、収穫量は2割増となり、この5年間で5人を雇用した。県の補助金で導入した重機によって作業効率が向上し、資金繰りも安定に向かう。
コロナ禍の巣ごもり需要に対応するため、目下の課題はインターネット販売の体制整備だ。「アナログ人間」を自称する松本さんは、商工会の助言を受けながらホームページやSNSの有効活用に向けて準備を始めた。
松本さんは「情報発信によって県内事業者とのビジネスマッチングを推進したり、商圏を全国に広げたりする足掛かりをつかみたい」と意欲を語る。
▼経営支援専門員の声 西部商工会産業支援センター 主任 足立 尚子
商工会への加入をきっかけに優栽さんの支援が始まりました。海藻米のお試し用2合パックや卸先の飲食店レジ横販売などを提案し、認知度も少しずつ上がっています。多くの方に味わっていただきたいという松本さんの想いを形にするため、商工会は今後も海藻米のファンが全国に広がるよう積極的に販路開拓支援に取り組んでいきます。
【 事業所概要 】 ■事業所名:株式会社 優栽 ■業 種:農業、米穀類小売業 ■住 所:日野郡日野町根雨353 ■連 絡 先:TEL 0859-72-2320 |