地域のチカラ ~伴走支援の現場~
天然菌を生かしたパンとビール~地域でかなえる食の循環~
一口頬張ると、素材の味と香りを感じることができる。そんなタルマーリーのパンを求め、智頭町の山あいにある店には多くのお客さんが訪れる。「智頭町は自然環境に恵まれている。パン作りもそうだし、新たにビール造りを始める為でもあり、ここなら自分たちが叶えたい食の循環ができると思いました」
そう話すのは店主の渡邉格さんと妻の麻里子さん。千葉県で創業し、岡山県を経て6年前に移住。パンやこの町で始めたビール造りなどを通して、豊かな食の循環を追い求めている。
▼こだわりの製法と、生産体制の限界
夫婦で食品関係の会社を辞め、天然菌を採取して作るパン屋を始めた。生きている菌を使うためイースト菌を使ったパンよりも手間がかかるが、智頭町で新たな製法に成功。それが「量産型長時間熟成発酵」の技術だった。
「一日で一週間分の生地を作り、冷蔵庫で保存。焼きたい前日に発酵機に入れたら次の日にはパン生地になる。大きくパンづくりが変わりました」と格さん。しかし、開業時から使用する設備では、取引先が希望する半分の量を作るのがやっと。生産体制に限界を感じつつ、その中で無理をするやり方はスタッフの負担にもなっていたという。
「そんな悩みがあったとき、商工会の支援はありがたかった。丁寧に補助金の計画づくりから相談に乗っていただき、迷っていた設備投資に踏み切れました」と、麻里子さんも信頼を寄せる。
▼課題を改善し、事業拡大に道筋
冷蔵庫、発酵機、製粉機などの更新を2019年に行い、パン生産量は2倍に増加。「昔だったら考えられない量が作れ、すごく楽になった」と格さん。供給体制に余裕が生まれ、断らざるを得なかった取引の依頼にも応えられるように。以前の7店舗から現在は30店舗に増えた。
「紙一重の幸運だった」というのも、コロナ禍でカフェを最長2カ月半も閉めることになった。6割程度占めていたカフェ事業の売上が落ち込んだが、パンの生産量を増やしていたことでネット販売を強化でき「なんとか全体としてカバーできた」(麻里子さん)
▼今後のビジョン
新たな事業体制は、次なる挑戦へとつながる。今夏に智頭の街中に宿泊を兼ねた2号店をオープンし、「滞在時間を増して町自体の魅力をもっと知ってもらいたい。町が面白くなれば若い人も店にも定着しやすくなるはず」と期待。地域の食材がうまく循環するシステムが出来上がりつつあり、夢がだんだんと形に。「鳥取という場所だから、自分たちが良いと思うものを提供し続ける形ができる」。
▼経営支援専門員の声 東部商工会産業支援センター 主任 草刈 陽子
智頭町への移住・移転をきっかけにタルマーリーさんの支援が始まりました。いつも、数年先を考えて会話することが多く、渡邉夫妻の想い・夢を日頃からしっかり聴くことを心掛けています。県内の販路拡大を目的としたマッチング支援では、取引拡大の一助になったかと思います。さらなる事業拡大と夢の実現に向け、商工会は今後も支援をしていきます。
【事業所概要】 ■事業所名:タルマーリー ■業 種:パン小売(製造小売) ■住 所:鳥取県八頭郡智頭町大背214-1 ■連 絡 先:TEL/FAX 0857-71-0106 ■営業時間:11:00~17:00 ■定 休 日:火曜日、水曜日
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