地域のチカラ ~伴走支援の現場~
B to BからB to C(個人市場)への販路開拓
鳥取市鹿野町は、名君で知られる亀井玆矩が開いた山間の静かな城下町。「尼子十勇士」で有名な山中鹿之助の菩提寺と墓があり、最近では歴史ある町並みを目当てに訪れる客が増え、隠れた観光スポットになっている。
▼商工会の職員と相談して完成した商品「鹿之助書斎3点セット」
「これ、『鹿之助書斎3点セット』というんですよ」。新社屋の一角にあるギャラリーに並んでいたのは、亀井家の家紋などが浮き上がる「ステンレス行灯」、ズシリと重い「鉛の筆立て」、一閃の刃が光る「書見台」の3点。商工会の担当者とアイデアを出し合いながら森さんが製作した力作だ。
▼40歳で脱サラ、ステンレス加工の会社を企業
40歳で脱サラ。鹿野町の奥さんの実家の倉庫を借り、ステンレス加工の会社を起業した。「組織に埋もれず、自分の力でどこまでできるか、やってみたかった」。独立後、住宅用手すりや厨房機器など受注は順調ながら、やがて手狭な作業所では大型製品や納期短縮が困難に。「商工会に相談したら、と周りに勧められても、独立とは他人に頼らないことだ、と変な思い込みが当初はあって…」。
会社設立後は京都の芸術大に通い、溶接と研磨の技術を駆使したオブジェ作品で県展や市展に入選。「腕に覚えあり」、一級技能士として自負と誇りがあった。
▼商工会職員との出会い、新規取引先獲得
ところが商工会を訪れると、意外だった。新社屋建設の融資相談だけでなく、「せっかく技術や芸術センスをお持ちだから、対象を事業所だけでなく、個人の消費者にも広げては」。担当者の助言で生まれたのが「鹿野にちなんだ書斎3点セット」。プレスリリースの活用も勧められ、新聞で大きく取り上げられた。また商工会のビジネスマッチング商談会に参加。技術が高く買われ、町外の新規取引先を獲得、売上増につながった。「商工会と出会って、ずいぶん仕事の間口が広がりましたね」。
同社の製品は近くの道の駅「西いなば気楽里」にも並ぶ。「外国の方から『これ(3点セット)海外でも受けるよ』と言われ、意を強くしました」と笑う森さん。コロナ後は県外やインバウンドの客もターゲットに、と夢をさらに広げている。
▼経営支援専門員の声 東部商工会産業支援センター 主任 田村 彰彦
「地域に寄り添った商品やサービスをこれからも考案し、活性化に貢献したい」。そんな持論を掲げる森さんが踏み出す次のステップが楽しみでなりません。森さんの強みは、独創性や創造性に満ちた作風、そして小規模事業者ならではの小回りを利かした対応力。支援では、森さんの思いをしっかり聴き、こうした強みを生かすよう心掛けています。森さんの思いを具現化し、販路開拓を後押しするなどして事業の持続的発展を目指します。
【事業所概要】
■事業所名:森工作所 ■事業内容:ステンレスを中心とした 金属加工製品の制作・販売 ■住 所:鳥取市鹿野町今市1529 ■T E L:090-9061-7204 ■F A X:0857-84-3596 ■営業時間:8時30分~17時30分 ■URL:https://www.morik1213.com/
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