地域のチカラ ~伴走支援の現場~
祖父母から引き継ぎ 人気豆腐店へと成長
鳥取市河原町のどかな田舎で、昔ながらの佇まいで営業する「平尾とうふ店」。あっさりとした木綿豆腐、濃厚でなめらかな絹豆腐、大豆の甘さ引き立つおぼろ豆腐の他、豆乳を使ったソフトクリームやアイスクリームも販売。シンプルだけど、奥が深い。そんな豆腐づくりに魅せられて、代表の平尾隆久さん(34)は、今日も大豆と真剣に向き合う。
▼自身の道を決めた瞬間
鳥取市内で会社勤めしていた平尾さん。「特にやりたいこともなく、なんとなく流されてサラリーマンになりましたが、働いていくうちに、頑張った分だけ評価してもらえる仕事をしたいと考えるようになりました」。しかし、何をしていいのか思いつかずにいたところ、河原町で豆腐店を営んでいた祖父母が、高齢のために店を閉めると言い出した。「それなら自分がする」。24歳、平尾さんが自身の道を決めた瞬間だった。
▼手探りで美味しさを追求
1957年の創業以来、祖父母は窯に薪木をくべて大豆を煮る製法を頑なに守っていた。1年間は修行の身として祖父母のやり方を素直に習った上で、平尾さんは「このままでは続かない」と改革に着手する。
まずは機械を導入して効率化を図り、さらに、全国30カ所以上の豆腐加工会社に見学に行ったり、さまざまな大豆を取り寄せて実際につくってみたりして、手探りで“自分の豆腐”づくりの試行を重ねた。そして、豆腐屋を継いで5年ほど経った頃、平尾さんはようやく「納得してお客様に出せる豆腐」をつくれるようになる。
若き豆腐職人として多くのメディアで取り上げられ、SNSなどでの積極的な発信も功を奏し、徐々に「その美味しさを誰かに伝えたくなる豆腐」として評判を呼ぶようになる。
次のステップアップとして新商品開発を考えている時、商工会の担当者である西尾さんからの提案もあり、補助金を活用して豆乳ソフトクリームなどの新商品開発を行った。従来なかった「お店で気軽に食べられる商品」をラインナップできたことで、若い夫婦や学生などのお客様が増えたという。新たに湯葉も商品化して好評を得ている。
今、店では20~30代の若い職人が育つ。「うちの理念は『関わる人すべてを豊かにする』こと。お客様やスタッフや地域の人々が心豊かに喜びを感じてくれるよう、これからも豆腐づくりを大事しながら、この地域全体を盛り上げていくようなことを考えていきたい」。平尾さんの挑戦は続く。
▼経営支援専門員の声 東部商工会産業支援センター 主任 西尾 崇志
平尾さんは昔ながらのお豆腐屋さんの良さを大切にしながらも、お客さんに「新しい価値を提供する」ことを大切にされています。特に豆乳ソフトクリームは新商品ということに加え、従来の商品にはなかった「気軽に食べられる価値」や「お店に来ないと食べられない特別感」を生み出し、コロナ禍でも来店客の増加に繋げられました。将来的には、お店を鳥取の観光名所にしたいと考えられているので、そのお手伝いが出来るよう今後も支援にあたっていきたいと思います。
【事業所概要】
■事 業 所 名:株式会社 クベル ■業 種:豆腐製造・小売業 ■住 所:鳥取市河原町佐貫1206 ■連 絡 先:TEL 0858-85-2240 ■営 業 時 間:9:00~18:00 ■定 休 日:日曜日、月曜日
■U R L:https://hiraotoufu.com/
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