地域のチカラ ~伴走支援の現場~
若桜町から発信 環境に優しく、循環型の製品づくり
若桜町の人たちから「ディア・ディアさん」と呼ばれている石井さんの革工房。『Dear・Deer』、日本語に訳すと『親愛なる鹿さん』。「私をこの町に引き合わせ、日々制作できるようになった鹿たちに感謝の気持ちを込めて」命名したという。
▼八頭郡若桜町での創業
元々は米子市内で革のバッグなどを卸す企業のサラリーマンだった。しかしお客様の要望に沿う既製品が少なく、「ならば、自分で作って売ろう」と思い、素人ながら〝脱サラ起業〟を決意。
「できれば地元産の革でバックなどを製作したい」と考え、軽くて丈夫で、柔軟性に優れ、古来から武具などに多用されてきた鹿革に着目し、動き出した。米子日吉津商工会から「害獣駆除で鹿が大量に捕獲されながら廃棄されている若桜町に行けば、鹿革が手に入る」というアドバイスをもらった。
その後、鳥取県の西の端から東の端、見知らぬ若桜町への移住。駆除された命を循環する「ジビエレザー」と格闘する石井さんの姿に、町の人々は温かかった。「鹿革は立体にするのが本当に難しく、一生勉強です」と謙そんするが、味わいのあるバッグや財布はリピーターが多く、3カ月待ちの人気となった。
▼鹿革の可能性を追求
若桜町商工会担当の垣田裕子係長の提案から、洗顔クロスとして評価の高い鹿革素材のスキンケア商品の全面リニューアルを実施し、新スキンケア商品「ピュアリス」を開発。
新スキンケア商品は、きめが細かくコラーゲンを含んだ鹿のなめし革のクロスをぬるま湯に浸すと、肌に負担なく毛穴の汚れを落とすことができる。「実は昔から舞妓さんや歌舞伎役者が肌の手入れに使っていたもの。途絶えていた伝統なんです」と話す。
▼温故知新のアイディア
古い教えや習慣を見直し、自然環境に優しく、循環型の製品づくりを「若桜町から発信していきたい」と話す。「気が付けば『SDGs』(持続可能な社会づくり)をやってたんですね。これからは私がこの地域に何か恩返しができれば」。少し照れ臭そうに笑った。
▼経営支援専門員の声 東部商工会産業支援センター 係長 垣田 裕子
鹿革のスキンケアの改良をきっかけに、経営計画を策定し、販路拡大に向けた支援を開始しました。社長と経営課題を見える化し、社長の商品に対する想いをしっかり計画に取り込むことで、今後どうしていきたいのか共有することができました。地域の活性化の取組、一歩先を見る前向きな姿勢には敬服します。今後も身近な相談者として伴走支援を行っていきたいと考えております。
【事業所概要】 ■事業所名:合同会社 MODEONE 革工房Dear*Deer ■取扱商品:各種革を使用した革製品など ■住 所:八頭郡若桜町若桜979-1 ■営業時間:9:00~18:00 ■定 休 日:月曜日 ■連 絡 先:TEL/FAX 0858-82-0875 ■U R L:https://dear-deer.net/
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