地域のチカラ ~伴走支援の現場~
食のあくなき探求心と発想が生んだ「ハイブリッド」のパン屋
因幡国の一の宮として毎年、多くの参拝客でにぎわう宇倍神社。「パン工房 大地の恵み」はその参道のすぐ脇にある。「最初は鳥取市街地に出店しましたが、朝が早い仕事。少しでも自宅近くがいい、と15年前、ここに引っ越しました」と話す塩見さん。
小さな店内には、フランスパンや食パン、米粉パンに交じって、なぜか京都名物の「麩餅」も。玄関横にはホカホカの焼き芋が並んだケース、店の外には地元産の米やブドウが買える自動販売機…何なんだ、このパン屋は?
実はこの店、店主の食へのあくなき探究心と発想が生んだ、美味しいものは何でも取り込む「ハイブリッド」なパン屋。若い頃から全国各地の食べ歩きや燻製作りなどが趣味で、それが高じて29歳で脱サラ、市内のパン屋で修業後、2002年に独立した。店名は「当時の片山県政の『地産地消』に共感し、息子の名前の『大地』を入れて命名しました」と話す。
▼新たな商品開発へ
開業後も、塩見さんは全国を精力的に食べ歩いた。寺社巡りで京都に訪れた時に「麩餅」と出会い、研究を重ねて国府町の材料を使用した「うべの麩餅」を商品化。
大阪では全国でまだ十数店しかなかった「壺焼き芋」に感動。「中はねっとり、安納芋の甘さを引き出す壺焼きに驚いた」。この感動を忘れることできず、自分でも販売したいという気持ちになり、鳥取市東商工会へ相談。
商工会の担当者は、塩見さんの考えや事業構想を聞き、塩見さんの頭に描く構想を可視化、塩見さんと一緒に事業計画を策定。商工会の専門家派遣事業を活用し、事業計画のブラッシュアップを行い、具体的なアクションプランを策定。
策定後は、鳥取県産業成長事業の補助金を活用し、車に壺を載せてイベントに出向く移動販売を始めた。
▼外出自粛の影響を受けて
新型コロナウイルス感染拡大による外出自粛の影響を受け、イベントへの出店が減少し、販売機会が減少。次の一手として塩見さんは、自社商品のパンや地元食材(ブドウ、米など…)が購入可能な自動販売機を設置。ゆくゆくは、地元陶芸家が製作したアクセサリーも自動販売機で販売予定。「ユニークな自動販売機を設置し、話題性のある商品を販売することで、地域全体が盛り上がれば」と話す。
「パン屋だけなら、コロナで厳しい状況に陥っていたかも知れませんでした」。「食べ歩きの経験を生かし、地域の人も巻き込んで神社の門前をもっと楽しく、賑やかにしていきたい」。とコロナ後の展開に夢を描いている。
▼経営支援専門員の声 東部商工会産業支援センター 主任 河本 敏宜
塩見さんは「地域の為に何かしたい」という思いと、パンの枠に捕らわれない様々なアイデアを持っておられる方です。これまでも補助金等を活用し商品化を実現されておられますが、アイデアはどんどん出てくるようで、お聞きするたびに私はワクワクしています。現在は補助金活用や販路開拓の支援を進めています。塩見さんのアイデアを一つでも多く形にし、地域を盛り上るために少しでも力になっていきたいと思います。
【事業所概要】 ■事 業 所 名:パン工房大地の恵み ■取 扱 商 品:パン、壺焼き芋etc… ■住 所:鳥取市国府町宮下1012 ■営 業 時 間:9:00~16:00 ■定 休 日:日、月曜日(不定休あり) ■連 絡 先:TEL 0857-37-2117 ■U R L:https://daimegu.jimdofree.com/
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