地域のチカラ ~伴走支援の現場~
お客様のイメージ・想いに応える技術
いかにたくさん作り、いかに安く売るかが競われる時代に、一点一点にこだわってニット製品を作る会社がある。「今では、他がやらないようなやり方を続けてきた。自分たちの技術を活かしてもっと新しいことにも挑戦していきたい」と話すのは、㈲三浅あみものセンターの三浅俊幸さん。ペットの思い出の写真を編み込んだ製品を考案。お客さんの気持ちに寄り添うようなニット製品で、新たな可能性を広げている。
▼大量生産の時代に、一点物で生き残る
祖父母が編み物教室をやっていた流れで、父・保則さんがオーダーメイドのニット製品を作る会社を起業。丁寧で高い技術力を武器に、ジャケットやスーツといった高級ニット製品をつくる東京のアパレル会社の仕事を一手に引き受けてきた。
幼い頃から工場が遊び場だった俊幸さん。「事業を継ぐつもりもなく、研究者になりたかった」と笑うが、自然と家業を仕事にすることになったという。
「ただ、すでに業界は衰退の一途。90%以上が労働力の安い海外製で、糸染めの会社もどんどんなくなっていく。下請けをしているだけではダメだと思いました。」と振り返る。
きっかけは、ひょんなところから。休日も編み物をするのが趣味という俊幸さんがある時、愛犬の絵を編み込んだものを作っていた。そんな時に、商工会職員から事業計画策定のセミナー(商工会主催)の案内があり、当セミナーに参加。セミナーの中でペットの絵を編み込んだクッション等を提案したら、その場でほしいという人がいたくらい参加者からとても好評を受け、「これだ!!」と確信した俊幸さん。
▼想いに応える、温もりのあるニットを
ペット写真を編み込んだクッションを商品化。徐々に認知されるようになるとお客さんの反響は想像以上に大きかった。「うちの子が帰ってきたみたい、と泣きながら電話をいただいたり、メールの内容をみてこちらが泣いたり…。使命感が湧きました」と話す。自身もペットを飼っているからこそ気持ちがわかるという。「愛するペットを失った人は家族や友人にも、その辛い気持ちを理解してもらえないこともある。少しでも支えになれたら」と力を込める俊幸さん。
2020年末には、表面が千鳥格子柄、裏面がペットという両表編み込みの製法で仕上げたリバーシブルストールを新発売。商工会からプレスリリースの活用も進められ、メディアに大きく取り上げられた。「いつもペットの思い出に包まれたい、でも、人前で使うのは恥ずかしいという声に応えるためにこの編み方を考えました」と話す。
これまで「あみものあ~と」としてホームページ対策を強化してきたが、ペット関連商品を扱うサイトが増加。卸して商品を販売してくれる店を募りたいと思い、商工会に相談。
商工会から展示会・商談会等の出展提案を受け、八頭町の販路開拓支援補助金を活用し、東京の展示会に二度出展。徐々に、注文数を増やすことにつなげてきている。
▼今後の抱負
「今はプリントのものが多いが、やはり編み物には編み物の良さがある。色落ちもしないし、風合いも違うし、何より暖かいですから。うちは一点物を作るのが得意な会社。これからは例えば家族や好きなものを描いた編み物を作っていくなど、もっと広げていきたいと思います」と今後の抱負を語る俊幸さん。
▼経営支援専門員の声 東部商工会産業支援センター 主任 濵﨑 和幸
商工会への相談は、展示会への出展に係る補助金活用がきっかけでした。後継者である俊幸さんを中心に事業計画を策定し、会社の現状から経営課題と具体的な取組内容の「見える化」を行い、社長と共に計画を検討し、進むべき方向を共有しました。俊幸さんの継続する力が展示会への出展から販路拡大に繋がったのではと思います。さらなる事業の飛躍を目指し、商工会は今後も寄り添った支援をしていきます。
【事業所概要】 ■事 業 所 名:有限会社 三浅あみものセンター ■事 業 内 容:ニット生地製造 ■住 所:八頭郡八頭町久能寺896番地33 ■連 絡 先:TEL 0858-73-0955 ■U R L:https://www.big-advance.site/s/173/1293
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