地域のチカラ ~伴走支援の現場~
ゆっくりと故人をしのぶ時代に合わせた家族葬
住宅街の一角に立ち、外観からは“普通”の一軒家に見える葬儀施設がある。この春、オープンしたばかりの家族葬「さくら」境港店。玄関から入ると20畳ほどの広いリビングのような葬儀ホールがあり、「たくさんのお客さんの対応で忙しくするというよりは、家族で故人のお見送りをゆっくりとしていただくための場所なんです。」と松本章伸さんが出迎えてくれた。
▼時代のニーズに対応した形式
高齢化や核家族化という時代の変化に伴い、「家族葬」や通夜式をしない「一日葬」、火葬のみの「直葬」と葬儀の形式もさまざまである。「競争が厳しい業界。大手が強い業界で生き残る方法を考え、たどり着いたのが小規模葬儀でした。自分たちとしても手の行き届く葬儀をした方が合っていると思った」と話す松本さん。
現在、小規模の葬儀に対応し、お客様が安心して利用できるサービスを展開し、5年ほど前から軌道に乗り始めた。
そんな矢先、新型コロナウイルス感染症の拡大。お客様のニーズも変化し、感染拡大を防止するために参列者を限定した葬儀を希望される遺族が急増。お客様のニーズに対応するために今後の事業展開について、南部町商工会の篠田主任に相談。篠田主任の助言を受けながら、顧客ニーズ・市場動向を分析・ターゲットを絞り込み事業の方向性を決定し、小規模葬儀需要に対応した新しい葬儀形態への参入により新規顧客獲得を図ることにした。
この春、家族葬専用住宅をオープン。一日一組限定で自宅や別荘をイメージした家族ハウスと、無宗派層や身寄りのない人が火葬するまでの場所として遺体安置ハウスを併設。
部屋は全て畳で、全面バリアフリーと利用者が安心して使っていただけることにも配慮し、顧客のニーズに応えている。
▼大切なのは「人」
14年前、一から夫婦で南部町から葬儀事業を始めた。「知識も、経験も、お金もなかった。丸三年、いつ潰れてもおかしくなかったが、ギリギリのところでいつも助けていただいていた」と話す。松本さんは、当時から支えだったのが商工会とそこで出会う人との繋がりだったという。地元の住民に話をつけてもらい、南部町になんとか最初の葬祭ホールを建てたのが始まりだった。
厳しかった創業時の経験から、「私たちは地域の人に生かされている」と話す。「だからこそ、いかにお客さんのために何ができるのか、どうやったらゆっくりお見送りしていただけるか考え、人の気持ちを大切にして、お客様に接している」と語る松本さん。
▼経営支援専門員の声 西部商工会産業支援センター 主任 篠田 陽子
商工会の支援のきっかけは12年前の町内初の葬祭ホール建設に遡ります。社会情勢の変化、コロナの影響など、厳しい経営環境の中でも、新たな商圏獲得に向け、常に挑戦し続ける松本社長の行動力と、スタッフのチーム力の高さにより、新店舗のオープンに繋がりました。さらなる事業の飛躍を目指し、身近な相談役として今後も伴走支援をしていきます。
【事業所概要】
■事業所名:有限会社マツモト ■事業内容:葬祭業全般、仏具販売、ギフト販売 ■住 所:西伯郡南部町阿賀315-1 ■連 絡 先:TEL 0859-39-6611 ■U R L:https://nanbu.sakura-partners.net/
|