地域のチカラ ~伴走支援の現場~
「好き」をカタチにした小さなパン屋
泊漁港近くの昔ながらの住宅地に、カラフルで落ち着いた青緑色のユニットハウスが現れる。「昔からパンやお菓子作りが好きで、パン教室をやっていましたが、まさかお店を持つまでになるとは」と話す鎌田忍さんは、一人息子に誇れるものをしたいとパンを作り始め、「好き」という気持ちを形にしてきた人。一念発起してオープンしたパン屋は、近所住民や遠方から足を運ぶファンまでたくさんの人でにぎわっている。
▼コロナ禍で方向転換
5年間ほど自宅でパン教室を開いていた鎌田さん。コロナ禍で生徒の参加も減っていたところ、「実家の土地でパン屋をしたら?」と夫に背中を押され、パン屋をオープンすることを決めた。
お店を始めるときは、まず商工会さんに聞くのが早いと友人に聞いていたため、商工会へ相談。「資金面のことや事業計画の見直しまで、親身になって教えてもらえました」と当時を語る鎌田さん。
当初、大きな店舗を考えていたが、琴浦町商工会の小林主任から「リスクを軽減するためにも、小さな店舗から始めた方が良いのでは」と助言を受け、後でスペースを増やしていけるユニットハウスを採用。立地は「私自身、おいしいと思えば多少遠くても買いに行くから、おいしいパンを作るだけ」と、大好きな湯梨浜町泊にこだわった。「パン屋をオープンすると決意したのはいいが、理想と現実の大きなギャップに、悩むことも多く不安もあったが、気軽に相談できる小林主任がいて本当に心強かった」と話す。
ふたを開けてみれば、当初は1、2時間待ちができるほどの大行列。「それを見て、私のパンにそんなに並ばなくてもいいのに…と思って、嬉しいけど怖くなって手が震えていました」と笑う。
▼こだわりは「自分が好きなパン」
「とにかく自分の好きなパンを並べています」。ふわふわとした柔らかい食感と、グリテンフリーの米粉、あんやクリーム、素材や具材にこだわりが詰まった鎌田さんのパン。一人で1日100個作るが、売り切れることが多いという。新たに週末限定のパンBOXを販売し、お客さんに楽しく食べてもらうアイデアは尽きない。
店名の通り、ママでもある鎌田さんの家のようなお店。誰でも気軽に来やすく、子どもがお小遣いを握りしめて来てくれることも。息子も学校帰りに必ず立ち寄り、手伝いをしたり、店のポロシャツを学校に着てPRしたりすると、嬉しそうに教えてくれた。
「今、大好きなパンに囲まれる毎日がとても幸せ。これから増築し、パンをもっと手にとってもらいやすくし、皆さんに喜んでもらいたい」と満面の笑みで、今日も美味しいパンを届けている。
▼経営支援専門員の声 東部商工会産業支援センター 主任 小林 祥樹
パン教室を運営されていた鎌田さんから「地元でパン屋さんを開きたい」という相談があったのはオープン1年半前でした。当初の計画では、様々な課題があって資金調達が上手くいきませんでしたが、スモールスタートできる形を模索し、あきらめず計画の練り直しをしっかり行ったことでオープンに繋がりました。鎌田さんの想いが実を結んだことに支援者として寄り添えたことはとても嬉しく、今後も持続的な経営サポートをしていきたいと思います。
【事業所概要】
■事業所名:kamama house(カママハウス) ■事業内容:パン小売(製造小売) ■住 所:東伯郡湯梨浜町泊1571-8 ■連 絡 先:TEL090-1013-7129 ■instagram:@kamama_house
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