地域のチカラ ~伴走支援の現場~
母と娘で二人三脚での経営
「杉の町」として知られる八頭郡智頭町。中心部から少し離れた住宅街にある「YAYOI favor−hair」は、代表者の神田弥生さんが33歳の時に開業した美容室。
▼母の想い・娘の想い
「当時は製材業が盛んで、働く女性も多く活気があった。人口も1万2千人ぐらいあったのに今は6千人台、半分ですよ。当然、売上の見通しは厳しい…」と話す弥生さん。山間(やまあい)の町々では今、人々の暮らしを支える身近なサービス業=理美容院が消えていくのが大きな問題となっている。
しかし、弥生さんには心強い味方がいた。「保育園の頃から自然に美容師になろうと思っていた」と話す娘の朝美さん。18年前、町外の美容室で働いていたが智頭町にUターン。「独りで頑張っているお母さんを助けたい、という気持ちから」と当時を振り返る朝美さん。50年以上の美容業の経験を持つ弥生さんと、若い人の流行を取れ入れて施術する朝美さんの2人が営む美容院は、小さな子供から90歳代までと幅広いお客様が来店され、気軽に過ごせる〝たまり場〟のようなお店である。
▼事業継承を見据えて
お客様の高齢化が進み、来店頻度も減っている現状を変える必要があると感じながら、弥生さんが朝美さんへ事業を引き継ぐことを漠然と思った時、背中を押してくれたのが、以前から経理等でお世話になっていた智頭町商工会の草刈主任であった。
2人が始めに考えたことは、お客様が居心地良く感じてもらえる店舗へ改装すること。
三人で話し合いを重ね、現状分析していくうえで、草刈主任から店舗改装に加え、お客様の高齢化が進んでいるため、若年層のお客様の来店獲得を目指すためにも、デザイン性の高い看板の設置・SNSを活用した技術力の見える化を提案。
小規模事業者持続化補助金の活用により、デザイン性の高い看板の設置と施術に必要な設備導入を実施。同時に導入した「髪質改善トリートメント」の新サービスは世代を超えて好評で、来店拡大に一役買っている。店舗改装は、智頭町店舗改修事業補助金を活用し、グレーを基調にしたシックでモダンな店舗に生まれ変わった。
▼母から娘へつなぐ美
また、朝美さんの気持ちの変化があった。3人で今後の事業について話し合いをしたことで、漠然と思っていた事業を引き継ぐことに対して、真剣に考えるようなり、以前にも増して事業に積極的に参画している。
「孫娘はいますが、こういう時代ですから、継いでくれとはあえて言いません。でも私たち2人が日々頑張っている姿は見せたいですね」と話す弥生さん。「今後も母親と一緒にこのお店を守っていきたい」と話す朝美さん。
母娘でつなぐ智頭町の〝美の砦〟は、これからも多くの常連客でにぎわうに違いない。
▼経営支援専門員の声 東部商工会産業支援センター 主任 草刈 陽子
支援のきっかけは3年前の巡回時。何かお手伝いできないかと思い、会話をしていくと、「時期を見て店舗改装をしたい」とのことでした。将来について母娘でしっかり考えていただくことを優先し、支援を進めました。母娘の想いを可視化することで、お二人がどんどん前向きになられ、支援者としても成長させていただきました。これからも地域に愛されるお店として、神田さん母娘の想いを実現できる様、引き続き応援していきます。
【事業所概要】
■事業所名:YAYOI favor−hair ■事業内容:美容業 ■住 所:鳥取県八頭郡智頭町智頭1945-7
■連 絡 先:0858-75-35040 |