地域のチカラ ~伴走支援の現場~
奥大山の豊かな自然の恵み クロモジ・竹で商品化
竹やクロモジに関する商品開発など、奥大山の豊かな自然の恵みを生かした各種事業を手掛ける、山の恵みの研究所。夫と共に移住してから約5年。地域にもすっかりなじみ、「ようやく進む方向が見えてきた」と話す岩﨑代表に聞いた。
▼竹に魅了されたどり着いた鳥取
神戸市出身の岩﨑代表は2001年、米子市出身の夫と共に尼崎市で雑貨屋『gladberry』を開店。2014年に閉店した後は、引き続き雑貨販売に携わりながら、オーガニック製品や天然由来の商品等についての造形を深めていった。
そんな岩﨑代表を魅了したのが「竹」。竹に関する事業、循環型の素朴な暮らしなどを求め、移住先を探し始めた。そして、友人との旅行で鳥取県を訪れたことがきっかけで、江府町の地域おこし協力隊に応募。夫婦で江府町に移住した(3年後の協力隊退任後、山の恵みの研究所を創業している)。
▼強い思いが繋いだ伝統
江府町には、昔から本格的な土窯をつかった竹炭づくりを続け、熟練の匠の技が根付いている柿原と呼ばれる集落がある。同集落では5年前、竹炭づくりの廃止および窯の取り壊しを決断していた。
「その決定の直後に移住してきたのが私達。必死に『続けましょう』と説得しました」。
結果として、住民有志により竹炭づくりは継続。現在、男性陣が炭焼き、女性陣は、岩﨑代表の念願でもあった幼竹によるメンマづくりを行っている。
岩﨑代表は、国産メンマの第一人者、日高栄治氏をはじめ全国から関係者を江府町に招き『純国産メンマサミット』を開催した。
この会をきっかけに、淡路島や広島では、国産メンマのヒット商品も生まれている。そして江府町でも今年、塩漬けメンマ『のびたけぇ』(200㌘・税込470円)が誕生した。
▼自然環境を守りながら
一方、岩﨑代表が江府町に移住してからその存在を知ったというのが、クスノキ科の落葉低木、クロモジ。古くから香木やお茶菓子の楊枝などとして重用されてきた植物で、関東から九州北部まで広い範囲に自生。
「柿原には竹だけでなくクロモジも群生しており、後に分かったことですが、大山地域は全国の中でも、特に自生が多い場所なんだそうです」。
協力隊時代から数えて約5年、様々な研究を重ね、現在、純度100%の『黒文字細胞水』、ハーブティー『くろもじのお茶』、『クロモジ緑茶』、『黒文字麦芽飴』、くろもじ茶入りの『和のチャイ』、ハーブウォーター『クロモジ蒸留水』、『水出しクロモジ珈琲』など数多くの商品を生み出すに至っている。
さらに、日本固有種のクロモジは近年〝和のローズウッド〟として国内外で注目度が高まっている。他県ではこれを地域振興につなげようと、クロモジのアロマづくりに特化して地域おこし協力隊を募集するケースもあるのだとか。
「事業としての将来性があるのは確か。ただ、軽トラ一杯(約10kg)のクロモジからとれるオイルは通常4~5mgほど。たくさん精油するためには、かなりの量の木を伐採することになります。継続的な事業にするためには、自生するクロモジの保護、循環も同時に考える必要があります」。資源枯渇、環境破壊などに繋がる懸念から、鳥取県には、事前に何らかの管理基準を設け、循環型を目指してほしいと訴える。
▼次への展望
山の恵みの研究所では竹製品、メンマなどの食品、クロモジのアロマや食品に加え、最近ではエゴマ油も作るようになった。そして先日、竹に関する実験活動団体『山楽暮(ヤマラボ)』を立ち上げた。
前出の『のびたけぇ』や、竹パウダー、竹酢液、大山竹炭工房と連携したスモーキーフレーバー『イヴランデモ』など竹関連商品の開発、販売に加え、今後は学校での体験活動や竹林整備体験にも力を入れたいとしている。
大山竹炭工房と連携した『炭窯温浴(竹炭窯温熱浴)』の普及は、特に力を入れたい取り組みの一つ。竹炭製造時に出る熱を利用し岩盤浴のように体を芯から温めるもので、服を着たまま体験が可能。遠赤外線による温熱療法で心も体も癒されるというものだ。
▼人との出会い・繋がりがあるからこそ
移住してから5年、様々な人との出会いや繋がりの中で数多くの取り組みや商品が生まれた。今後も移住者や、山の恵みを活用した事業を志す個人や企業とはどんどん繋がっていきたいとしている。
最後に岩﨑代表は「移住してから今に至るまで、様々な出会いによってすごく助けられているなと感じます。今後もこの部分は大切にしたい」と話した。
【出典】株式会社 山陰政経研究所 旬刊政経レポート令和4年10月15日号
▼経営支援専門員の声 東部商工会産業支援センター 係長 足立 尚子
「地域資源クロモジを活かした商品をたくさんの人に伝えたい」との想いでECサイトの開設と商品開発の相談に来られたのが支援の始まりでした。江府町の大自然に魅せられ関西からIターンされた岩﨑さん、地域おこし協力隊として活躍後起業、「地域活性化となる商品を開発したい」という想いを形にされています。今後も地域の人と関わり地域に貢献できる商品開発へ対話と傾聴を繰り返し実行支援が進むようサポートしたいと思います。
【事業所概要】
■事業所名:山の恵みの研究所 ■事業内容:製造業 ■住 所:日野郡江府町大河原1091-2 ■U R L :https://gladberry.stores.jp/
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