地域のチカラ ~伴走支援の現場~
地域課題を新事業に。竹のエキスで美肌パックを開発
地域で働くことは、その地域の誰かの困りごとを解決すること。時代とともに変化する地域課題に目をつけたのが、創業以来50年、地元の景観を美しく保ってきた㈱田中造園土木 代表取締役 田中 静雄 氏だ。
「今の時代、山に入るだけの人手がいなくなり、また高齢化も進んでいます。竹林が荒れているという相談からこの事業が始まりました」と見せてくれたのが、竹のエキスを抽出して昨年発売開始した「パンダフル・フェイスパック」。美容への関心が高まる中、環境保全にもつながる新しい事業に期待を寄せている。
▼悩みの種だった竹に着目
きっかけは、お客さんから裏山の竹林が荒れているという相談だった。「一年に一回くらい竹を切ってきちんと管理すればいいけど、なかなか山を守る人がいなくなってきている。ただ、切ってその場に寝かしていても竹は腐るまでに何十年もかかり、大変なんです」と話す田中さん。
もともと造園業で門松を作ってきただけに竹になじみはあったが、竹を使って何かができないだろうかと思い、過去に芝用の鎌を自作し、意匠登録を取ったアイデアマンの勘が働いた。
国内で小型粉砕機を探し出し、竹を細かく粉砕し粉砕粉にした。その粉砕粉から竹のエキスを抽出することに成功した。その後、竹のエキスの成分について研究する方策について鳥取市東商工会へ相談。
商工会から成分分析ができる機関の紹介や専門家派遣制度を活用して、専門家のアドバイス等を受けながら竹の成分を研究していくと、竹のエキスを抽出した成分にはコラーゲンを生成活性化する作用があるとわかり、抽出方法での特許取得を目指した。
無事に令和2年7月に真空抽出機械を活用した特許を取得し、令和4年2月に竹エキスを使用した保湿パックを開発して発売した。
▼地域のことを考え、できることを
女性向けだと競争率も高く、なかなか目立たない。今は男性も美容意識が高まっていると考え男性を対象にしたパックにした。無地だけでなくパンダ柄のパックも作る遊び心も田中さんらしさ。沖縄の空港にある土産店では400セットが売れたという人気ぶりだ。
創業者である先代の頃は年間に200~300件の個人宅の庭仕事があったというが、現在は公共工事を中心とした造園の設計施工管理が主な仕事となった。仕事の規模は違っても、根っこにある思いは変わらない。「事業を安定させながら、持続可能な地域社会を作っていくために、できることをやっていきたい。この鳥取を美しく、みなさんに快適に暮らしてもらいながら、地域の活性化に繋がれば嬉しい」と語る田中さん。
竹の伐採につながり、鳥取の森を守るー。「竹鳥取物語」と名付けた事業は、これからさらにストーリーを紡いでいく。
▼経営支援専門員の声 東部商工会産業支援センター 係長 垣田 裕子
社長が地域の方から竹林の管理について相談を受けたことで、今回の商品開発のアイデアが生まれ、商工会へ商品開発、販路開拓の相談があり支援が始まりました。商品開発では専門家派遣制度を活用し、販路開拓では、プレスリリースやマッチング支援を行い、販路拡大の一助になったかと思います。社長の商品開発のアイデアは新たなステージに向かっています。商工会は引き続き事業所に寄り添った支援を行っていきたいと考えてています。
【事業所概要】
■事業所名:㈱田中造園土木 ■事業内容:造園工事設計施工管理 公共施設の造園保守管理 民間の庭園管理等 ■住 所:鳥取県鳥取市国府町宮下1130 ■連 絡 先:TEL 0857-24-0476 ■U R L: https://taketottorimonogatari.com/company/
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